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タンパク質の定量
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OD
ODとは、
Opitical Densitiy(光学密度)の略で、一般的には吸光度と呼ばれる。一般的に、分光光度計は吸光度0.100〜1.000の範囲でもっとも精度良く測定することができます。吸光度は英語で"absorbance"であるので、"A"や"Abs"と略記される。例えばA
260
とは、"(対象の溶液の)波長260nmにおける吸光度"を意味する。
ランベルト・ベールの法則 Lambert-Beer law
吸光度は『濃度cが一定なら、透過光の強さ Iは、透過する層の厚さLが厚くなると、指数関数的に少なくなる(ランベルトの法則)。また、透過する層の厚さLが一定なら、濃度cが濃くなると透過光の強さIは指数関数的に減少する(ベールの法則)。』というランベルト・ベールの法則で規定される。
入射光の強さを I
0
、透過光の強さを I、吸光度を A、光が通過する層の厚さを L、光の吸収をする物質の濃度を cとすると、
I= I
0
*10
−EcL
あるいは
A=log( I
0
/I)=EcLと表わされる。Eはモル吸光係数で、吸光物質ごとに固有の定数。
生物学の実験で主に使用される入射光の波長は、
230nm(フェノールなどの有機溶媒、バッファー)。260nm(核酸)。280nm(タンパク質)。595nm(タンパク定量、ブラッドフォード法)。546nm(タンパク定量、ビューレット法)。562nm(タンパク定量、BCA法)。600nm(菌培養液)。
ここでは
1.核酸の定量
2.核酸の純度確認
3.バックグラウンドの補正
4.菌培養液の測定
を紹介します。
タンパク質の定量については、
タンパク質の定量のページ
に紹介しています。
核酸の定量
核酸(DNA, RNA)の溶液は、光路長10mmのセルで測定したときの260nmにおける吸光度が1.0の場合、それぞれ濃度は50, 40ug/mlであることが知られており、この値(ファクター)をもとに定量することができます。
計算式は補正の項を参照してください。
オリゴヌクレオチドの場合は塩基配列によって異なりますが、33ug/mlというおおよその値を用いることができます。ssDNAの場合は37ug/ml。
A
260
の吸光度測定ではDNAとRNAを区別することは不可能なので、注意が必要。
核酸の純度確認
細胞から核酸を抽出する際には、タンパク質が不純物として混入してきますので、それを除去するための精製が必要になります。吸光度比A
260
/A
280
は、この値だけで絶対評価することはできませんが、核酸の純度の指標になります。DNAやRNAを純度よく調製できれば、この吸光度比がそれぞれ≧1.8, ≧2.0 になることが期待できます。この値からのズレは不純物の存在を示唆しますが、測定結果については慎重な判断が必要。
測定には、特定の波長のみを測定する場合と、200nm〜350nmほどの幅で10nm刻みにとる場合がある。後者の場合、260nmの測定値は核酸の吸収スペクトルの緩やかなピークのトップにあたり、280nmの測定値は勾配の急な位置にあたります(つまり、波長のわずかな変動で吸光度は大きく変化します)。したがって、280nmにおける波長のわずかな変動は、260nmに比べて吸光度比A
260
/A
280
に大きく影響します。そのため、タイプの異なる装置(同じであっても)では、それぞれの装置自身では一貫した結果が得られますが、互いの波長精度が異なるので、吸光度比は多少違ってきます。
核酸の濃度も吸光度比に影響します。溶液の濃度が低すぎる場合は、測定値が装置の測定限界に近くなり、260nmのピークと280nmのスロープがバックグラウンドの吸光度とほとんど差が無くなるので、測定結果は変動します。正しい測定値を得るために、吸光度が>0.05出なければならない1つの理由は、この点にあります。
230nmにおける吸光度の上昇は、吸収極大が230nmに近いペプチドや、Tris, EDTA, この波長に吸収のあるその他のバッファーの混入を示唆します。RNAサンプルを測定した場合には、吸光度比A
260
/A
230
が>2.0になり、この値より低い場合は、RNA精製に一般的に使用される230〜260に吸収のあるグアニジンチオシアネートの混入が示唆されます。
値がこれよりも低い場合には精製する。マイクロアレイを用いた実験ではフェノールなどの残存がシビアに影響するため、カラム精製が良いが、カラムにトラップされて溶出されない核酸の量が多い。精製後の収量をあげるためにはエタ沈のほうが良い。濃度をあげるだけであればVac spinでの濃縮が可能で、70℃ほどの温度をかけてもRNAは十分に解析に利用できる。
バックグラウンドの補正
核酸やタンパク質の吸収ピーク(260, 280nm)から完全に離れた波長における吸光度を用いて、バックグラウンド吸収の補正を行うことがあります。使用する波長は320nmで、溶液の濁り、バッファーに強い吸収がある場合や、微量セルを使用した場合の測定値への影響を補正することができます。
dsDNA濃度(ug/ml)=(A
260
-A
320
)*希釈倍率*50
ssDNA濃度(ug/ml)=(A
260
-A
320
)*希釈倍率*33
RNA濃度(ug/ml)=(A
260
-A
320
)*希釈倍率*40
吸光度比=(A
260
-A
320
)/(A
280
-A
320
)
吸光度比=(A
260
-A
320
)/(A
230
-A
320
)
この式では、バックグラウンド値としてA
320
をA
260
から引いているが、A
260
のみで計算することもある。
A
260
の吸光度測定ではDNAとRNAを区別することは不可能なので、注意が必要。
バックグラウンドの補正を行うと、キャピラリーセルやウルトラマイクロボリュームセルを使用した際の、測定値のばらつきを押さえることができます。
またバックグラウンド値の測定をしない場合、Warburg/Christianの係数計算法を用いると、次の式によって求めることができます。
核酸濃度(ug/ml)=-36*A
280
+62.9*A
260
菌培養液の測定
細菌に誘導をかけたり、集菌する場合は、通常、600nmにおける濁度が約0.4になるまで培養を行います。菌体数(密度)と濁度の間には、約0.600ODまで直線的な関係があり、測定した濁度と別の方法(例えば顕微鏡用のスライド)で求めた菌体数との比較で検量線を作成することができます。したがって、測定する培養液は濁度がこの値を超えないように希釈する必要があります。600nmにおけるランプのエネルギーは比較的低いため、2.000以上の濁度は測定できません。
菌培養液のような濁ったサンプルの測定では、測定される光の強さは、検出器に入る散乱光の割合であって、分子の吸光によるものではありません。測定結果はセルと装置の出口スリット、スリットの形状、モノクロメータの光学特性により左右されます。したがって、タイプの異なる装置で測定した場合には、同じ懸濁サンプルであっても異なる結果になります。他の装置と比較する場合には、その装置であらためて標準曲線を作成しなければなりません。
標準曲線は測定したOD値と期待OD値を比較することで決めることができます。期待OD値は別法(たとえば、スライドガラス上に菌培養液を一部とり、顕微鏡下でカウントする方法など)により直接カウントする方法や1OD_600=8*10^8cells/ml(大腸菌の場合)の換算式から求めることもできます。
菌培養液の濁度測定には、サンプルにグリセロールを加えると、懸濁物の沈降による吸光度の変化を防ぐことができます。
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