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PCR

PCRとは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略。細胞内でおこるDNA複製の機構を応用し、生体外で特定の塩基配列の複製を行う。

PCRの原理
まず、既知の配列を元に1本鎖の合成オリゴヌクレオチドを2種類作製する。1つはDNA二本鎖の1本の増幅しようとする領域の片端に、もう1つは相手の鎖の別の端に相補的である。このオリゴヌクレオチドをDNAポリメラーゼの触媒するin vitro DNA合成のプライマーとして使うと、最終的に得られるDNA断片の末端はこのプライマーの位置で決まる。反応の様子は次のとおり。

【1】青が鋳型となるDNAの全長、紫が増幅したい領域とします。


【2】高温(94〜98℃)でDenature(二本鎖のDNAを一本鎖にする)。


【3】低温(50〜65℃)でAnnealing(一本鎖のDNA同士を結合させる)。温度はプライマーのTm値によって変わるが、Tm値と同じ温度でなくともよい。


【4】中温(68〜72℃)でElongation(鋳型の塩基配列に相補的なDNA配列を伸長していく)。


【4'】Elongationの拡大図。反応液中のDNAポリメラーゼが、dNTPを結合させていきます。


【5】Denature。


【6】Annealing。(【5】の2本のdsDNAのうち、上の1本のみを描いています。)


【7】Elongation。(この時点で目的の配列のみが増幅されています。)




PCRの反応液の組成
具体的な使用量や反応液のVolume(体積)は、酵素やキット、サイクラー、ラボによって異なります。一般的な試薬とその役割について書きます。

dH2O
distilled Water。滅菌水のこと。MilliQや、市販の水を使ったりする。PCRは反応液量が少ない(20〜100ul)ので、余計なイオン等の混入していないキレイな水を使う。酵素を買うと、おまけについてくることもある。MilliQを使用する場合は、ビンに入れた後オートクレーブにかけることが多いが、市販の水を使用するときには既にキレイなのでそのまま使用することが多い。
dNTP
deoxy NTPの略。NTPとは、ATP・GTP・TTP・CTPをまとめてこう呼ぶ。新規に合成されるヌクレオチド鎖の材料。
Mg2+
ポリメラーゼの活性に必要。MgSO4を入れるのが一般的。Mg2+をMn2+に変えると、合成の正確さが落ちるのでランダムミューテーションを入れることができる。
プライマー
Primer。17〜34mer程度の長さのssDNA。ポリDNA合成の開始に必須。"ここからここまでを増幅しますよ"という範囲をポリメラーゼに教えてあげるためのものと考えればよいとおもいます。DNA合成装置を使って作るが、業者に外注して作ることが多い。プライマーの配列を決定することを"設計"という。
プライマーを設計する際の注意点。
・ GC含量に偏りがないこと。
・ Tm値が60℃前後であること。
・ ヘアピンなどの分子内構造をとらないこと。
・ プライマーダイマー(2種類のプライマーが互いに結合した状態)を形成しないこと。
Template DNA
鋳型DNA。10pg〜200ng程度を使用する。gDNAなら 10〜200 ng、Plasmid DNAなら 1〜50 ng。
DNA ポリメラーゼ
DNA Polymerase。PCRの試薬でこれだけは室温に放置したり、手で温めてはいけない。1本鎖のDNAを鋳型として、それに相補的な塩基配列を持つ DNA鎖を合成する酵素の総称。
DMSO
ジメチルスルホキシド dimethyl sulfoxide。デムソと読む。非プロトン性極性溶剤。塩基対を解離させる作用があるので、ターゲットがGCリッチなときに使われる。Tm値が上がるので増幅がかかりにくくなることも。

プライマーの設計
プライマーを設計する際には、プライマーの配列と、Tm値が重要。プライマーの配列はターゲットと合っていても、Tm値がよくても、プライマーが長すぎると増えないこともある。

【Tm値の計算式】For DNA 10-40 bases
Tm = DH/{DS + So - R・ln(C/4)}-273.15 + 16.6 log[K+]

DH = nearest neighbor enthalpy
DS = nearest neighbor entropy
So = initiation entropy
C = oligo concentration
[K+]= univalent salt conc.
R = molar gas constant
(1.987 cal/oC-mol)
NAR 18:6409 (1990)

【Tm値の計算式】For DNA >40 bases
Tm = -675/n + 0.41(%GC) + 81.5 + 16.6 log[K+]

n = number of bases
[K+]= univalent salt conc.
Meth in Ezym. 168:761 (1989)


【Tm値の計算式】100 - 600 bpを増幅する時
TmTarget = -675 / n* + 0.41 (%GC) + 59.9
( 通常のPCR Buffer: salt 50mM の時 )




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