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DNAマイクロアレイ  1.はじめに

DNAマイクロアレイ(DNAチップとも呼ばれる)とは、スライドガラスなどの表面に数千〜数十万のプローブと呼ばれる遺伝子配列由来のオリゴヌクレオチド、あるいはcDNA断片を高密度に配置したものです。培養細胞や組織から抽出した核酸を蛍光色素ラベルし、プローブとハイブリダイゼーションさせることにより、元の細胞内の遺伝子発現量やゲノム配列を検出します。Stanford大学Brown研究室で開発されたcDNAアレイは、cDNAが配列されたマイクロアレイを用いてmRNAの発現量を相対的にはかるものでしたが、現在ではオリゴヌクレオチドを配列したものが主流で、gDNAのコピー数解析を行うためのアレイも開発されています。

マイクロアレイ実験を行うにあたって、どのプラットフォームを選択するかはさほど重要ではありません。ここでいうプラットフォームには『アレイ』と『ラベル法』『スキャン・数値化法』『解析ソフトウェア』が含まれます。アレイ実験においてはプラットフォームの選択が結果にもたらす影響よりも、実験全体のデザインがはるかに大きな意味を持ちます。

マイクロアレイは万能のツールではありません。世に出ている論文をみて、『アレイの実験をすれば結果が出る』という幻想にとらわれてしまう研究者はたくさんいます。確かにデータを解析すればどんな実験であっても『それっぽいScatter Prot』をかいたり、『それっぽいクラスタリング』をすることは可能です。しかし本当に必要なのは、そのデータが何を意味しているのか、です。

マイクロアレイは開発途上の技術です。マイクロアレイの最大の欠点は、結果のバリデーションがとれないことであるといわれています。その結果が正しいものであるのかどうか、アレイ実験だけでは誰にも評価できません。そこで必要になってくるのは、アレイ実験の結果をほかの方法でも確かめることです。リアルタイムPCRでも、Nothern Blotでも、いいでしょう。mRNAの発現だけではなく、その先にあるタンパク質レベルのダイナミクスを見ることも重要です。アレイデータの確からしさをみる指標のひとつとしては、公共のデータベースを利用できます。NCBIのページでは多くのアレイデータが公開されており、自由にダウンロードすることができます。先駆者の利点は後発者よりも多くの経験をもっていること、後発者の利点は先駆者の失敗を参考にできることです。マイクロアレイの実験を確実に行うには、費用と時間がかかります。まずはすでにあるデータを参考にすることで、より無駄を省いた実験を組むことが可能になるでしょう。

マイクロアレイは多数の遺伝子の発現をいちどに解析することのできる強力なツールです。このような質問を受けたことがあります "qRT-PCRができるのなら、マイクロアレイで実験をする必要がないのでは?" 仕組まれたようなナイス質問でした。確かに結果の確実性ではqRT-PCRの方がアレイよりも有利です。しかし、1遺伝子あたりの解析費用・時間を考えると、マイクロアレイが圧倒的に有利です。
その利点を生かして、基礎生物学から臨床医学までの幅広い分野で、マイクロアレイの応用が図られています。一例として、トキシコゲノミクスの分野では、・毒性メカニズムの解明・毒性予測・Biomarkerによる評価・創薬ステージでの篩い分け・ヒトでの副作用予測・他剤との差別化などに利用されています。マイクロアレイを導入するメリットは、【篩い分けの観点から】・病理組織変化が見られない場合でも高感度検出が可能・スクリーニングとメカニズム予測、差別化が同時に行える・解析パターンを変えることで、様々な毒性予測可能・毒性の強弱の評価ができた・Biomarkerを使って毒性ポテンシャルの評価が可能。他の初期毒性データと併せることでより深い解釈ができる・変動を解析することで、病理所見関連遺伝子の発見【メカニズムの観点から】・新規の研究仮説、情報を取得できる・動物種差の評価ができる【他剤との差別化の観点から】・病理所見が同じでもgene profileが全く違っていた・副作用発現頻度の高い類薬と比較などがあげられます。一方で導入後の課題は、・解析時間の短縮・スループット↑・コスト↓・データベース、インフォマティクスの充実・技術的信頼性、評価方法の確立・ヒト組織に関する倫理問題などが未だに残されています。





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